菖蒲華さく候。

梅雨のさなかのこの時期は、洗濯物は乾かないし、空は暗いし、なんだか気分は晴れません。六月末より七月初めは一年でもっとも雨が降る時期だとか。ですが、お気に入りの綺麗な傘やレインコート、足元を濡らさないレインブーツがあると、それだけで外出の楽しみができます。また休日はあえて出かけず、家で音楽や読書を楽しむ日に。

「晴耕雨読」を試してみると、意外なほどリラックスできて、心身のメンテナンスによさそうです。茶人は一年の中でも、最もこの時期を好むといわれます。

しとしとと降る雨が丁度よく、露地や脇の草花を輝かせます。近年のような集中豪雨ではなく、昔の雨には本当に情緒があったものです。実は私、しとしと雨がとても好きなのです。

合掌

うちしめり 菖蒲(あやめ)ぞかをる ほととぎす 鳴くや五月(さつき)の 雨の夕暮れ

新古今和歌集・藤原良経

おほかたに さみだるるとや
思ふらむ 君恋ひわたる 今日のながめを

(あなたはこの雨を普通と変わらない五月雨だと思っているのでしょうか。あなたを想う私の恋の涙であるこの雨を。)

和泉式部日記・和泉式部

松下幸之助氏が面接で「あなたは運がいいですか」と質問し、「運が悪い」と答えた人は不採用にしたという逸話は有名です。「それって判断基準になるの?」と驚きますが、決してデタラメな方法ではないかもしれません。

イギリスの心理学者R・ワイズマン博士が、運について調べた面白い実験があります。

自分は運が良いという人と、運が悪いという人を集め、喫茶店の前に落ちているお金に気づくか否か、また喫茶店の中でどんな行動を執るかを調べたところ、運がいいと答えた人は落ちている紙幣に気づき、喫茶店に入ると実業家の横に座って自己紹介し、会話を始めました。一方、運が悪いと答えた人は、お金にも気づかず、実業家の隣に座ったものの、その後話しかけることもなかったといいます。

これは『運のいい人の法則』リチャード・ワイズマン(著)矢羽野薫(訳)に書かれています。こうした実験を重ね、ワイズマンは、「運は魔法の力や神の贈り物ではなく、心の持ちようや考え方が大きく影響している」と述べています。

お釈迦さまは、私の運命を生み出す原因は、私自身の行いであると教えられました。

その行いには、身と口と心で造る三つがあり、中でも最も重いのが、心の行いであると説かれています。口や身の行いは、心の指示によるからです。心の火の粉が舞い上がるのは、火の元が燃えているからです。心が思わないことを、口や身が勝手に行うことはできません。「戦争は心の中ではじまるのだから、平和の砦は心の中につくられねばならぬ」という、ユネスコ憲章の言葉もあります。心の種まきが、あらゆる口や身の行いに影響することは明らかでしょう。

野口英世は「絶望のどん底にいると想像し、泣き言を言って絶望しているのは、自分の成功を妨げ、そのうえ心の平和を乱すばかりだ」と言っています。私たちはつい、自分にダメ出しする癖をつけていないでしょうか。思考が変われば行動も変わります。運がいい人は何故運がいいのか。結局幸せな結果を生み出す種まきを、心と口と身て習慣的にしていたからだといえるでしょう。

松下幸之助氏も、そんな習慣を身に備えた人を見極めようとしたのかもしれませんね。

釈 正輪 拜