竹笋生(たけのこしょうず)の候。

上記の言葉は七十二候の一つで、二十四節気の立夏の末候にあたり、凡そ五月十六日から二十日ごろに相当するといわれています。季節は初夏で、筍が生えて来る様子を意味します。

春から初夏にかけて、ひょっこり頭を出し始めるたけのこ。「雨後のたけのこ」ということばがあるように、この時期に雨が降るとつぎつぎに姿を現します。昨年は豊作だった筍ですが、今年は全国的に不作のようです。

昔から筍の花が咲くと、大きな地震が来るなどと噂をされていました。筍の根は地中を無尽に張り巡らせ、時に床を突き破って生えてくることがあり、厄介ではありますが、しかしその張り巡らされた根っこが、家屋の倒壊を守る役割もします。日本人は昔から筍と上手く付き合ってきたのですね。

合掌

筍の 荷がゆく朝の 札所前

飯田龍太

今年はかの文豪・夏目漱石が亡くなって百年が経ちます。その夏目漱石が、驚きをもって親鸞聖人を称賛したのは大正二年、第一高等学校(東大教学部の前身)の講演でのことです。漱石がここで言う「仏教の大改革」とは、聖人三十一歳の時に、公然と断行なされた肉食妻帯のことを言います。

当時、僧侶の結婚は固く禁じられていましたが、隠れて妻帯する者も多くあり、「かくすは上人、せぬは仏」といわれていました。

ところが親鸞聖人は、公然と肉食妻帯を断行されたのです。漱石はこう続けます。「その時分に、(略)思い切って妻帯し、肉食をするということを公言するのみならず、断行してご覧なさい。どのくらい迫害を受けるか分からない。もっとも迫害など恐れるようでは、そんな事は出来ないであろう。(略)自信なり、確乎たる精神なりがある。その人を支配する権威があって、初めてああいう事が出来る。」(模倣と独立)

代々真宗門徒であった漱石は、千ページ以上の大部な『真宗聖典』を所持しており、かなり読み込んだ形跡もあります。聖人の「非常な強い根底の有る思想」の一端に触れ、深く感動するものがあったのでしょう。

親鸞聖人に初めから非常な思想が有り、非常な力が有り、非常な強い根底の有る思想を持たなければ、あれ程の大改革は出来ない

夏目漱石「模倣と独立」より

釈 正輪 拜