「虹始めて見る」頃となりました。先週末から満開を迎えた桜ですが、一両日の雨で、関東では今日あたりから散り始めています。

この時期の雨は強く降ることはなく、霧雨の雨がよく降ることがあります。春の七十二候の一つに、先の「虹始見」がありますが、大気の乾燥している冬には見えにくかった虹も、このころから見ることが多くなります。

虹といえば夏の季語ですが、春の虹は夏の虹よりも淡く、儚い感じが漂います。月明かりに浮かぶ虹を月虹といいますが、そこに桜の花びらが散る光景のなんと幻想的なことか。

合掌

初虹や 白川道を 花売女

中川 四明

昨年、最もヒットしたアニメ映画『君の名は。』は今、海外でも大変な評判となっています。私も観たのですが、主人公は男女二人の高校生。田舎に住む三葉(みつは)は、私の郷里である、岐阜県飛騨地方の女の子。男の子は都会に住む瀧(たき)。何の接点もないはずの、二人の体と心が入れ替わってしまうところから物語は始まります。

主題歌の『前前前世』というタイトルが、遠い過去からの人との繋がりや因縁を感じます。

仏教では、生まれる前を「過去世(前世)」といい、生まれてから死ぬまでを「現在世」、死んだ後を「未来世(来世)」といいます。私たちの生命の流れは過去からずっと続いていて、大河に泡が出来ては消え、また出来ては消えてと、たくさんの多生を繰り返していると説いています。

「袖触れ合うも多生の縁」という言葉をよく聞きますが、街の中で見知らぬ人と擦れ違った時、お互いの袖が少しだけ触れ合った。接点はただそれだけ。もう会うことはないかも知れない。しかし、多くの人がいる中で、「その人」と袖が触れ合うほどの距離に近づくのは、遠い過去から余程の縁があったからなのだ、ということを表しています。

そういえば、この人といると何となく落ち着くとか、とても初めて会ったようには思えない、と感じる人っていますね。そういう人たちは、長い間の縁があって、今一緒にいるのだと思うと、何だかすごく特別な感じがしてきます。

今までに出会った人。今、一緒にいる人。これから出会う人。私たちに起きる、あらゆる出会いにもまた、全て意味があるのです。近くに居れば、文句の一つも言いたくなることも、面倒だと感じることも、いろいろ出てくるものです。それでも何だかんだと言いながら、側に居る人は、遠く過去から繋がる懐かしい人なのでしょう。

人生でのさまざまな出会い。一回一回の縁を、もっともっと大切にしていきたいですね。

釈 正輪 拜