春待月の候。
一年でもっとも寒さの厳しい時期になりました。陰暦十二月を「春待月」ともいいますが、春を待ちわびる思いは今も昔も変わりません。春はもう、すぐ隣まで来ています。

合掌

呼びかはす 雉子の声や をちこちは
小松ばかりの 山まろうして

若山牧水

冬空を見上げると、そこには満点の星が煌めいています。輝く星たちは、太陽のように自らひかりを放つ恒星で、その周りには月のような惑星が数多く存在しています。宇宙にはどのくらい星があるのでしょうか。

太陽系が属する銀河系には、凡そ二千億個の太陽のような恒星が存在するといわれ、宇宙には銀河系のような銀河が、一千億以上あると考えられていますから、宇宙の広大さは想像を絶します。

そんな広大な宇宙空間に浮かぶ地球は、まさに空気中を漂うチリのような微々たる存在です。そんな小さな地球に住む、さらに小さな人間のたかだか百年の人生は、大宇宙からすればほんの一瞬に違いありません。瞬く間の人生で、私たちは何をするためにこうして生まれてきたのでしょうか。

「人生は 食て寝て起きて 糞たれて 子は親となる 子は親となる」と一休は歌っています。

私たちはどうしたら少しでも金や財を得られるか、また出世できるか他人から認められるか、欲しいものを手に入れられるか、やりたいことをやれるか、それらの実現に朝から晩まで一生懸命です。金を儲け、マイホームや高級車を手に入れ、社会的地位を確立し、好きな趣味に打ち込むことが出来れば、さぞかし愉快な人生になるだろうか、本当にそうなるのでしょうか。

「人間は努力するかぎり迷うものだ」と、ゲーテはファウストで語っています。悪戦苦闘の努力をして、ようやく叶った夢なのに、「得られたものはこれだけ?」と、落胆した体験はないでしょうか。金儲けに熱を上げた1980年代のアメリカ。大金持ちは雑誌に英雄として書き立てられました。

アメリカ新大統領、ドナルド・トランプ氏は、「人生最大の目標を成し遂げた人で、その目標達成とほぼ同時に寂しく虚しく、放心に近い感情を抱き始めることのない人はめったにいない。(中略)他人の人生を見るまでもなく、それが本当だということは私〈D,トランプ〉にはわかる。私も他の誰にも劣らず、その落とし穴に陥りやすいのだ…」

百千の敵と死闘し、険しい道のりをよじ登って集めた金も財も名声も、生きる目的を正しく把握していなれば、無意味に感じられてしまうのでしょう。

この一瞬の人生を、何のために生きるのか。誰もが知りたい「何故生きる」の疑問に、ズバリ解答を示されたのが、お釈迦さまの説かれた仏教なのです。

釈 正輪 拜