0010-s株式会社つ・い・つ・いの創業者、遠藤貴子さんのカバーストーリー第3回は、期間限定出店から常設店への展開、そして本店となる路面店への思いについて伺いました。

「初めは通販しか考えていませんでした。それで、開発期間に時間があったので、ひたすらツイッターやフェイスブックを使って宣伝していました。それがどれだけ寄与したかはわかりませんが、出だしは非常に売れました。しかし、そのまま通販だけで売上を定着させていくには時間が掛かると思うようになって、ヒルズマルシェに出店してみたところ、結構売れたのです。それがおもしろかった」

 ヒルズマルシェとは、毎週土曜日、アークヒルズで行われている朝市のことだ。そこから、最初は断っていた六本木ヒルズでのワゴン販売を受けることにした。2011年、それが最初の転機だった。以来、ワゴン販売の中では上位3位以内に必ず入る人気店となった。

 その間に、期間限定の店舗をさまざまな場所で出すようになった。たとえばエキュートの東京、目白、立川、恵比寿三越、新宿伊勢丹、渋谷ヒカリエ、横浜ベイクォーター、東京ソラマチなど多彩だ。現在は、北千住ルミネを中心に、期間限定出店を各所で展開している。

 2013年7月に5周年を迎える。この2年は店舗販売が全体の売上のおよそ7割。残り3割をネット販売とBtoBビジネスが占めていた。それで今年度の売上は、対前年比180%を達成した。

 次なる展開は、BtoBビジネスの拡張だ。柱の一つは婚礼需要。大手の結婚式場と契約をして、引き出物を卸している会社との取引が順調に推移している。また、法人契約も増え始めた。お中元やお歳暮、あるいは成約に際したお礼の品として「あられ」を仕入れるという契約だ。

 もう一つの柱は、カタログ販売。婦人画報とは長年のお付き合いだが、さらに内祝い専門のカタログ通販など、”あられ”の需要は少なくない。ホテルや高級旅館、あるいは酒販店などへの卸も始まった。

 こうしたBtoBビジネスで安定的な売上を確保し、その上でリアル店舗、さらにネット販売の売上を積み上げるという方向にビジネスは向いている。

 さて、もう一つ重要な側面が人事管理だろう。

「最近までは、10人ほどのアルバイトに、正直、こちらが振り回されていたところがあります。人事管理は本当に難しいと感じていました。出店が重なると、どうしても私が店に立つ時間が長くなります。あるいは頻繁にお店に顔を出して、それこそ”指導”でした。しかし今は、アルバイトの人たちもようやく育ってきてくれて、また各店舗のスーパーバイザーとして全体を切り盛りしてくれる人にも恵まれています」

 そのため、遠藤さんは店番から解放され、営業と開発により時間を避けるようになった。

「今では、できるだけ私は店に行かないようにしています。その方がうまく回るような体制になりつつあるのです」

 社員は現在2名。陣容を大きくする気のない遠藤さんにとって、「社員」はすなわちパートナーという位置づけに近い。だから、すぐには決めない。”これ”と思う人材に目をつけ、仲良くなり、それこそSNSなどでつながり、彼女たちの働きぶりを傍から眺め、タイミングを待つ。彼女たちの転機に、改めて声を掛ける。だから、そうそう間違いはない。

 ビジネスの陣容も、体制も固まってきた。今の想いは、デベロッパーに左右されない、そして実験的なアンテナショップともなる本店を持つことだ。

 彼女が「本店がない」という悩みをフェイスブックに投稿すると、「自分がいる場所が本店だから、今日はここが本店ですと言えばいい」とか「本店はwebです、でいいのでは」という意見が多く見られた。それもまた正しいと思うが、地に足がついた感じも確かに必要なのかもしれない。ブランディングには、目指すべきメッカが必要なものだ。

 いくら売れても、商業施設のハードルは高いもの。1週間、2週間の催事はよくても、その売れ行きがいいからと言って、簡単に常設店にしてもらえるわけではない。
「世の中、甘くないですよ。今ある常設店より絶対、こっちのほうが売れていると思っても、資金力や安定性を見られるので、立場が弱いのです。だから、告知方法もさることながら、自分のメディアを確立しないといけないと思います。そのビルのお客さんに頼るというのは止めたいのです。自分のお客さん、ブランドのファンを確立したいのです。だから、小さくてもいいので、路面店を創りたいのです」

(文/赤城稔)

紫の番傘はワゴン店舗のシンボル

紫の番傘はワゴン店舗のシンボル

■遠藤貴子さんは、10人の女性経営者たちのストーリーで紡ぐ『女性社長たちのしなやかな戦略』(赤城 稔著)に登場します!