cs06_04_01市村氏は、行政と営利企業、そしてNPOを中心とした非営利セクターによる「社会の三権分立」というグランドデザインを提唱する。前衆議院議員、市村浩一郎氏のカバーストーリー第4回は、非営利セクターの重要性と現在のNPO法(特定非営利活動促進法)の問題点について伺いました。

 市村氏は、社会の三権分立を主張する。この三権とは、立法、行政、司法のことではない。行政セクター、営利セクター、そして非営利セクターを指す。非営利セクターとは、いわゆるNPOを中心としたセクターだ。

「この社会の三権分立こそが、私が掲げたい、いや、政治家になる前から掲げてきた旗印で、ある意味でのグランドデザインです。あるいは、先に示した国柄を思い出し、そして育むための仕組みです。非営利セクターは行政、営利に次ぐ、第三のセクターと呼ばれることが多いですが、私はそうは思いません。第一セクターというか、土台なのだと思います。そもそもは皆、非営利だったはずです。皆が協力して、助け合って生きる共同体です。その中から市場原理が生まれ、行政というものが登場してきた。より近く、江戸時代を振り返っても、非営利の共同体意識が強く、皆の生活を支えていました。日本ほど、いわば「民の中の公(おおやけ)」が発達していた国はそうはなかったと思うのです。
 ところが、明治時代以降、国を富ませる、富国強兵の名の下に、国家公益独占主義が幅を利かせてきてしまいました。公益は国家、すなわち行政が独占する。それが今日まで営々と強化され、続いてきたのです。それが今や諸悪の根源とすら言えるものなのです」

 まだまだ多くの人が、株式会社などの営利を目的とした事業以外の分野=公は、国や地方自治体が行うものだと思っている。しかし、そこに限界が生じていることに誰もが気づいている。介護や環境など、「公」の充実がますます必要となる分野において、国や地方財政がひっ迫する現在、民間の非営利団体による「公」の活動の重要性が増しているのだ。小さな政府を志向して「民にできることは民へ」と言う場合に、その民が営利セクターの民だけを意味すれば、限界が生じる。それこそ、営利主義によって公共サービスが歪められると考えてしまう。弱者が切り捨てられると思えてしまう。しかし、民間には、民の中の公を担う非営利組織もあるのだ。そこを忘れなければ、そうした限界や不安は払しょくされるはずだ。

 市村氏は松下政経塾に在籍していた当時、1989年から91年にかけて、米国ペンシルバニア州ピッツバーグのアレゲニー地域開発協議会で研修を受ける機会を得た。この組織は営利企業でも行政の機関でもなかった。アメリカ合衆国連邦法のIRS法典501(C)3に当たるものとして法人税の免税や寄付金控除などの税制優遇措置を得ている団体、すなわちNPOであった。こうした存在を知って、市村氏は、NPO(Non-Profit Organizationの頭文字を取った)という造語を作り、日本においてNPO法を制定するという志に燃えて帰国した。当時米国では、NPOセクターはすでに立派な経済セクターとして機能していたのだ。

 市村氏は日本新党の本部職員となるが、その当時から、政策研究責任者として法案作りに着手。日本新党が新進党に合流してまもなく、阪神・淡路大震災が起こった。

 NPO法の制定は困難を極めた。国家公益独占という壁に阻まれ、官僚は、ボランティア支援法にすり替えようと画策した。

 NPOというのは、簡単に言えば、利益を利害関係者で分配しない組織である。つまり、そこで働く理事や職員は相応の報酬を得ていいし、本来事業である非営利事業に再投資することを前提に、収益事業で利益を上げることも許される。そうした意味で、非営利組織と言っても、雇用を生む、あくまでも経済セクターの一員なのである。

 NPOには多くの形態がある。社団法人、財団法人、特定非営利活動法人のほか、宗教法人、学校法人、社会福祉法人、各種協同組合などもそうだ。

 その中で、広く、志のある多くの人々がハードル低くNPO法人を設立することができるように、さまざまな活動体に法人格を与えて、日本の非営利セクターを充実させる道を開く法律として、市村氏が制定に奮闘した結果生まれたのが特定非営利活動促進法である。紆余曲折を経て、この法律は1998年3月に成立した。しかし、これは市村氏の理想には遠いものだった。当時の自民党を中心とした連立与党案をベースとして成立したからだ。

「たくさんの問題があります。まずその後拡大はされましたが、“特定”とあるように、活動内容を限定しています。また役員のうち報酬を受ける者の数が、“役員総数の三分の一以下であること”といった無償労働要件がある。“不特定多数の利益”という項目も内容によっては解釈が難しくなります。難病対策のための法人はダメなのかといった議論です。そもそも、設立に関して認証主義である点も大きな問題です。これは本来、法律にのっとって登記するだけでいい準則主義にすべきなのです。認証制度であるから、行政が監督する立場になっています。これも本来は必要がない。行政がコントロールしようとするからこうなるのです。そして、何と言っても足りないのが、寄付に対する税制優遇措置なのです」

 寄付金はNPO法人のいわば命だ。寄付金が集まらないから、日本のNPOの多く、たとえば特定非営利活動法人の多くは不幸で、国や自治体の補助金を目当てに運営しなければいけなくなってしまっている。国家公益独占は今も息づいている。

 特定非営利活動法人のうち、認定非営利活動法人として所轄庁から認定されれば、その法人に寄付ないし贈与をした場合は、その個人または法人に対する所得税、法人税、または相続税の課税について寄付金控除などを適用するとされている。しかし、認定非営利活動法人になるのは簡単ではない。

「NPOの重要性がまだまだ認識されていないのです。特定非営利活動法人を通称NPO法人と言う人も少なくないのですが、これと財団法人などは別物だと思われています。認定される法人は極めて少なく、プチ天下り先にもなっていて、妙な組織もできてしまっているので、むしろ胡散臭いと思う人たちも増えている。この状況をなんとかしたい。

 米国では、ハーバード大学もスタンフォード大学も、ブルッキングス研究所も皆、NPOです。それらと、日本で私が目指したNPO法人は、規模こそ違えど、志は何も変わらないのです。そうした思いが共有される、社会システムを作り上げるためには、一義的には、彼らを助けるコミュニティ財団、非営利基金等の充実が必要です。このままでは、特定非営利活動法人などNPOには、人材も資金も集まらない。その仕組みがないからです」

 長引く不景気で、皆、あえいでいるが、だぶついている資金もまだたくさんある。それを営利だけで回すのではなく、行政が税金として吸い上げて、無駄に使ったり、使途不明金にしたりするだけでなく、非営利セクターに回して、有効に使われるようにしなければいけない。10万円分、税金を払う代わりに自分の支援したい非営利組織やコミュニティ財団に寄付する。そのほうが、よっぽど社会貢献になるし、自分が望む社会に近づける手伝いができる。早くそういう時代が来るといい。

「非営利セクターを魅力ある、やりがいのある場にして、優秀な若者たちに参画してほしいのです。そうした普遍的な仕組みを作り上げたい。そのためにこれからもまい進したいのです」と市村氏は結ぶ。

(文:赤城 稔)

市村氏の著したNPO関連の著書など

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