cs06_02_01東日本大震災からの復興だけでなく、予想される首都直下型地震や台風、ゲリラ豪雨など、将来の自然災害への備えも疎かにはできない。前衆議院議員、市村浩一郎氏のカバーストーリー第2回は、本来必要な「自然への畏怖」をベースにした自然災害への備えと、プロジェクトの巨大化や復興予算の流用など、歪んでしまう公共事業の背景について伺いました。

「発災から1カ月、私は仙台に留まって陣頭指揮を執りました。そこでどうしても国会に戻らなくてはいけなくなったのですが、それから1カ月はことあるごとに現地に通いました。また、その後は災害対策特別委員会の筆頭理事なども務めさせていただき、大災害に対して、いかなる備えが求められるのかを研究、議論してきました」

 21世紀は、残念ながら大災害の世紀だともいわれる。東日本大震災で、そのすべてが終わったわけではない。数十年おきに、大地震、それに伴う津波や火山噴火という自然災害が起こることを覚悟しなくてはいけないとさえいわれる。一方で、巨大化する台風やゲリラ豪雨、竜巻など、これもまた甚大な被害をもたらす自然災害が日常化し、毎年のように繰り返し起こるようになってしまった。そうした世紀、そうした国土に私たちはいるということをしっかりと認識し、覚悟し、備えなければいけない。

「備えると同時に、自然に対する畏怖というものを、もう一度思い起こす必要があるのだと思います。もともと日本は自然崇拝の国でした。だから、自然に対して驕ることなく、謙虚になるべきです。そして、できるだけの備えをする。
 ところが東日本大震災の被災地では、たとえば防波堤を1メートル高くしたら、あと二百数十億円予算を上乗せすることができるといった話がまかり通っている。その物差しが情けない。もっと覚悟を持って臨むべきところなのに、案の定、復興需要をただひたすら当てにしている勢力の勢いが衰えない。もちろん被災地を再建するための復興需要ならば歓迎ですが、復興予算の流用も後を絶たないし、…現状はあまりに、寂しいですよね」

 市村氏は、1カ月だけ、政府の総合海洋政策本部の担当政務官を務めた。その際に、洋上浮体式の風力発電所の建設を柱の一つとするように提案、復興事業として福島沖にも設置するよう提言している。

「日本のメガフロート技術は世界をリードしています。羽田空港の次の滑走路はメガフロートでいくべきだと思っているほどです。しかし、私たちはあれほどまでに巨大な風力発電など考えてはいなかった。しかも、それを二つ作るという計画になっていた。官僚は、どうしてもプロジェクトの予算規模を大きくしようとする傾向がある。そうすれば旨味も大きくなるからです。それでどうなったか。この計画はいち早く、頓挫してしまったようです。志が低いのです。それが復興にブレーキを掛ける主因なのです」

 2020年、東京オリンピックの開催が決まった。

「このこと自体は、喜ばしいことだと思っています。それを目標に、次の世代につながる復興や改革をしていってほしい。ただ、何かそのことが水戸黄門の印籠のように、金科玉条のごとくになって、疑問視する声があっても握りつぶしてよくわからない方向に進んでしまう。自然破壊が許容され、必要性のわからない箱物行政が復活する。そうはならないことを期待したいが、多分、そうなるのだろうと危惧しています。刹那的に、その目的に群がって、利益を貪ろうとする。そもそも日本人は、そんなさもしい人間ではないはずなのです」

 市村氏は、首都直下型の地震を心配する。4年以内にM7からM8クラスの直下型地震が起こる確率が高いといわれるが、市村氏もそれを否定しない。

「東京オリンピック開催までの7年以内に大地震が起こる確率は、残念ながら非常に高いと思います。オリンピックも大事ですが、そのためにも、地震や巨大台風など災害に強い都市へと東京を再生させなければいけないのです。そこを忘れて、ただオリンピックのために予算をぶんどりあって、それこそ地震のことなど考えない建設を続けたとしたら、大変なことになります。災害は来てからでは遅いのです。そして、災害に“まさか”はないのです。それを私たちは嫌というほど学んだはずです」

 東日本大震災の被災地の復興は道半ばだ。福島第一原発も決して人間のコントロール下になどに留まってはいない。地震だけでなく、台風やゲリラ豪雨、竜巻などの被害の爪痕は、まだ日本列島のあちこちに残っている。しかも、そうした被害がまだこれからも起こるのだとしたら、どれだけの備えをしなければいけないかわからない。来るべき大地震への備え、日本全国の原子力発電所の備え、…やるべきことはあまりに多い。そのためのいいきっかけに東京オリンピックがなればいい。しかし、そうしたことをすべて忘れて、つまらない建設ラッシュが起こるとすれば、日本という国の政治はあまりに愚かだ。

(文:赤城 稔)

※次回は10/19更新予定です。

あの悪夢を繰り返さないために

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